「大丈夫です、さん。心配いりません。」
寅之進はそう言うが、正直に『そうなんです』と言うとも考えられない。
第一龍馬が、寅之進が時折フと元気の無いのを目撃し、それで心配して
に相談してきたのである。
…龍馬はあれで状況の判断能力に優れている。
寅之進の様子を見誤ったとは思えない。
「…ほんとう?」
しかし、弟を心配する様な視線を送ってくるに、寅之進はすこしばかり
ムキになった様子で軽く突き放す様に首を縦に振った。
「本当です!…俺はもう14ですよ。一人で江戸留学ぐらいどうって事ありません。」
「…!…そ、そっか。そうだよね!」
申し訳なさそうに相槌を打ったに、寅之進はとっさに熱が下がった。
「あっ!い、いや、その、藩邸には仲間もおりますきに。土佐へは文も
ちょくちょく送ろうと思ってましたし…あの、すみません…こんな言い方…」
寅之進は自分の幼さに自己嫌悪を感じて俯いてしまった。
いつもこうである。特にに子ども扱い・年下扱いをされるとどうしても
反抗的になってしまう。
自分だって、武市や龍馬の足元にはまだ及ばないかもしれないけれど
それなりに一人で自立し物事を考えられるんだと伝えたくなってしまうのだ。
認めて欲しい―という願望から来るのは、間違い無い。
の弟の様な存在になりたいと言ったのは自分なのに…。
弟の様な存在なら、年下扱いされたって当然なのに。
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