そういえば先日であった池内蔵太も土佐出身だ。
藩命でここへ来ているワケでは無い様であったし、という事は彼も
剣術修行か何かで留学しに来ているのか。
(…まさか時勢遊学の為にってワケじゃあないよねぇ?)
ガタイは良かったが、よく思い出して頭が良さそうだったかと考えれば
どちらとも言いがたい。能ある鷹はツメを隠すとは言うが、正直どう思い出しても
『体力系』との印象が強かったのである。
(うーん。笑った顔は結構可愛かったんだよね〜。)
関係無い事まで考え始めたところに、階下の雑踏の中からを呼ぶ声があった。
気がついて視線を下へやると、周りの平均身長よりも少しぬきんでた背丈の
元気な青年がコチラへ両手を振って呼びかけていた。
(あ、内蔵太クン!)
噂をすれば影…という程でもなかったが、偶然のことにも眉が上がった。
応えようとして、出窓から身を乗り出して手を振り返したが―
「おーい!!もう大丈夫なのか?」
「って……」
内蔵太はほぼ初対面であるに関わらず突然名前で呼び捨てだった。
悪い気はしなかったが少々恥ずかしかったり驚いたりで思わず硬直してしまう。
そうこうしている間にも内蔵太は何食わぬ様子でが腰掛けている出窓の
下へ到着し、二階を仰ぎ見ながら例の年齢に見合わぬ可愛い笑顔で続けた。
「見舞いにきたぞっ!今からそっちへ行っていいか?」
「えっ?!あっ、うん!いいよ!」
「よしっ!じゃあ待ってろよ!」
そう言うと、長い髪をしっぽの様に振付けて宿の中へと入っていく。
唖然としたはとりあえずウチワを置いて布団を整え、身だしなみも整えて
内蔵太が来るのを待つのだった。
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