「大体が、鏡川なんぞでぶっ倒れておったんじゃ。おんしが普通でないのは
その時点でようようわかっちゅう事じゃきに。ははは。」
まるで茶化すかの様な言い草だが、明らかに龍馬はの秘密を悟って、
それでいて尚、言いづらいことなら言わなくてもいいと笑ってくれている。
「それにおんしの出は横浜じゃろう?横浜なら色んなもんがあるんじゃろうし、
わしら田舎モンにはわからん様な色んなこともあるんじゃろう。」
『土佐者は江戸へ出ても田舎モンじゃと痛感した』と付け加え、
言いづらい事情を察してスルーしてくれたのだった。
「詮索してすまんかった。でも、おんしがわしに伝えようとしてくれたんは
嬉しかったき。…その気になったら、いつでもわしに相談してや。」
…やっぱり、龍馬に相談してよかった…
「ありがとう、龍馬。」
灯台の明かりに揺らめいて映るの微笑みに、龍馬は一層照れくさそうに
頭を掻いて「ちゃちゃちゃ!」と笑う。
「まあ、もうちっくと仲良うなれたら…秘密の多い女子も、なかなかえいもんじゃき。」
「うん……って、エエ!?」
笑う龍馬は再びハンカチを手にとり、クンクンとにおいを嗅いで
「しっかしこりゃあまっこと、いいにおいのする布じゃなぁ〜」
と関心していた…。
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