※お試し小説※



長井雅楽という俗論党…いわゆる公武合体派とも開国派とも言われる派閥の大物が、
現在藩主の信頼を大に受け、防長の藩論を掌握しているのである。
京都での周旋活動を文句ナシに実行させた後、藩命で江戸へやってきた今も
彼が掲げる『航海遠略策』という公武合体案を唱え、高杉ら尊王志士達の活動や
周旋を妨げていた所だ。

そんな折、高杉から呼び出されて何度か会食に赴いたが、高杉はだいぶ指をくわえて
イライラしている状態であった。
特に彼の家系は、藩内でも長井ら俗論党の重臣達と関わりの深いところにあるらしく、
父親から『傍観していろ』だの『おかしな行動は慎め』などとクギをさされまくり、
それを無碍にもできない高杉だから余計にむしゃくしゃしているのだ。
それで、勤めがあるにも関わらず毎晩の様に酒と女相手に憂さ晴らしをしている有様で、
「僕は馬鹿になった!!!桂さんとも縁を切って、時代の波とは交わらぬところで
 女を抱いてただ明日を見るその日暮らしの人生を送るぞ!!!!」
 と言っては隣に座って苦笑していたに飛びつく勢いである。
「ぎゃあ!!!ちょっ、高杉さん!!!」
「いいじゃないか、君もいい加減抱かれたらどうなんだ?」
こういう事が多々おこるから高杉の隣には座りたくなかったのだが、
彼がいつもを隣に座らせようとするので、結局こういうオチになるのだ。
もちろん酒の席だからどこまで本気かわからないし、久坂や伊藤なんかも笑って盛り上がっている。
たまに桂もこの場にいるのだが、見かねた彼や久坂らが伊藤にやめさせる様に仕向けてから
ようやくは開放されるのだ。
そして挙句には
「長井を斬る!!!!」
久坂達と一緒になっていつもこんな危なっかしい事を言っている。
ここでも桂がいれば、彼がやれやれとばかりに一応彼らをいさめる。
とりあえず翌日になれば収まっているので、今はそれで構わないが…
桂がいない場合は酔った勢いで本当に刀を持って出て行こうとするので、と伊藤が
大焦りでそれを止めるのである。

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