―表紙― 登場人物 物語 絵画

江戸取引3





※仮SSとなります。 プロット書き出しの延長であり、気持ちが入りすぎて長くなりすぎてしまった覚書きの様なもの。
途中または最後の書き込みにムラがあって不自然だったり、後に修正される可能性もあります。ご了承ください。



12月上旬。江戸での任務をようやく終えた武市ら勅使一行は、今となっては公武合体派として違う路線をゆく薩摩の動きを警戒して颯爽と京へ帰って行った。それを見計らった様に、乾ははつみを呼び出す書簡を送る。

 乾からの呼び出しを受けたはつみは常に追従してくれる寅之進とあえて別行動をし、一人だけで指定の料亭へやってきた。そう、取引で得た機会の結果はどうあれ乾ははつみの願いを叶えてやった。今度は乾の願いをはつみが聞くという番なのである。

 普段の男装でやってきたはつみであったが、恐らく格上の武士や大名らが愛用する様な料亭なのか自分の格好が極めて場違いである様に感じながらも、品の良い女中に部屋へと案内される。乾は女性を一人脇にい置いて酒を嗜んでいたが、はつみが来ると直ぐに引き上げさせてはつみを近くへと座らせる。  はつみは何かを察しているのか、すでに『覚悟』を決めた様子で緊張している様子が伺えたが、なまじはぐらかしたり遠回しにしても意味のない事だと考える乾は、直球で用向きを伝えた。
「…今晩おんしを抱く。それが取引じゃ」

「……わ…わかりました…」

 乾は冷静であるつもりだった。その上で、3年前に一目惚れして以来ずっと頭から離れない『かぐや姫』に公平な『取引』を申し出たつもりだ。極めて個人的な事でありながら、主である山内容堂にはつみを目通りさせる手はずを整えた。とはいえ、もとよりはつみは吉田東洋の覚えがめでたく、実際東洋からの手紙を読む容堂公から『退助。桜川はつみなる者と面識はあるか。どのような女子ぜよ』と直接話を振られた事すらもあったからこそ、容堂公にとってもいくばくか興味を持てる斡旋ができるとの算段があっての判断だったとも言える。

 一方で、彼女の願いそのものはは正直耐え難いものであった。今や将軍御目見えとなり日の本を代表する『尊王攘夷』の急先鋒として名を馳せた武市半平太。はつみは武市と容堂公の間にある『見えるようで見えない溝』を少しでも埋める為に大胆にも乾の地位を利用し、土佐において絶対的な存在である容堂公との対談に挑んだのだから…。
『取引において何を求められようとも、心だけは奪えない。』
 暗黙ながらにその事を突き付けられる心持で、今日この時に至る。

…自分は冷静だ。そのはずだ。
それでも、『手に入らないのならいっそのこと形だけでも一線を越えたい』『なりふり構わずに抱きたい』、そんな直情的な想いを閉じ込めておくことは、もうできない。これが叶わぬ独占欲の成れの果てなのか、単なる嫉妬なのかは分からない。ただ、『取引』として関係を持ってしまってはもう二度と後戻りできなくなると分かっていても、気持ちを押さえておくことはできそうになかった。。

 緊張しているはつみの手を取り、襖を開けて布団が敷き詰められた部屋へと誘う。真っ赤な絹の布団にきゃしゃな体が落ち、四肢を付きながらハッとして自分を見上げるはつみを見下ろしながら、直ぐに触れ合う程の距離にゆっくりと膝をついた。
「…おんしの事は妻として抱きたかった」
 無骨な指が、ふわりと形の良い曲線を描くはつみの輪郭をそっと撫で上げる。いつもは良くしゃべるのみならず血気盛んな男どもをも言いくるめてしまう饒舌が、今は自分を受け入れようと必死になりを顰めている様だった。動き出さない舌を隠す瑞々しい唇に触れて軽く感触を楽しんだ後、不意に口付ける。

「―…!」

 細い肩がびくりと跳ね上がるのを乾の力強い腕が包み込むのと同時に、彼の首元からふわりと香る上品な香りがまるで媚薬の様にはつみの鼻腔をくすぐった。これは乾の知らぬ事ではあったが、『香』ではないこの乾の上品な香りはどういう訳かはつみの『秘孔』を突く効果がある様であった。一番初めにこの香りを嗅いだ時は『いい香り』だったのが、これまでに何度か乾と逢瀬を重ね、迫られて不意に香る度に『男女の距離』を意識させる効能をもたらすようになっていたのだ。
 実際これまで乾が迫ってくる事はあっても、口づけ以上の体の関係を迫ってくる事は無かったのだが…今日は明らかに乾の手つきが違う。触れる唇を交わらせる角度も深く、ぬらりと入り込んでくる舌の感覚に背中が反るのを優しくも力強く支えてくれる掌がまた、とても熱い…。熱がこもれば香りも沸き立つのか、単に長く近距離で舌をなめ合っているせいなのか、はつみは媚薬の様なその体臭に包まれて直ぐにとろけ始めてしまった。

 驚いて弓なりに沿った背中が次第に骨抜きになって行き、その体重を自分に預け震えながらも口吸いに応じてくれるはつみに乾もますます興が乗ってくる。そのまま絹布団の上に押し倒し上から組み敷いて、再び口吸いをしながら着物を脱がせていった。白い首筋の柔肌を食み、舐め上げるとぶるぶると反応を示すはつみが愛らしい。ずっと触っていたいと思わせるきめ細かで健康的な肌につぶつぶと鳥肌が立ち、自分の愛撫に身体が反応している事が伺えた。気を良くした乾は敢えてじゅるじゅると音を立て、しゃぶりつく様にして首筋を舐め上げてゆく。その独特の甘みを感じながら、耳の裏、首筋、鎖骨、そして胸元へとゆっくりとねぶり続け、上着も取り払って更に肌を露出させていった。

「…ん、今日はさらしを巻いちょらんがか」
 胸のあたりに見慣れぬ形の下着が現れ、手のひらで肌を撫でる様にしてそれを捲し上げていく。身体筋が華奢である上に普段は胸元をさらしで巻き固めているが故にその乳房を拝むのはこれが初めてであったが、まるで葛きりまんじゅうの様に艶やかで白い双丘がふるりと揺れながら眼前に現れ、思わず生唾を飲み込んでしまう。柔肌の双丘を優しく手で包み込めば意外にも手のひらからこぼれてしまいそうな肉厚さで乾を愉しませてくれ、程よい弾力と吸いつくような感触を楽しむ様に手を動かすその傍ら、はつみは誰にも触れられた事のない女性の象徴とも言えるところを弄ばれて顔を真っ赤にしながら一生懸命に何かを話そうとしていた。
「あ、あの…今日…もしかしてこうなるのかなって思ったから…」
 どうやら、自分の身体が求められているという事を事前にちゃんと分かっていた様だ。そしてそれを受け入れる前提で、胸元を固めるさらしを巻かずに現れたという訳だ。…『取引』だから当然とはいえ、事前に自ら意識をして準備をしてきたとは…思いもよらぬ『朗報』に乾の表情も思わずほころんでしまう。
「……めんこい女子じゃ…・おかしゅうなりそうぜよ」
「ふあっ!?あっ、はむ……んんっ」
 双丘の中央にその存在を主張しはじめた薄紅の蕾を慣れた手付きできゅっと摘まみ上げ、びくと反応して浮いた顎を迎える様にして再び口付けた。いつも不動の表情で物怖じする様子も見せない無骨な乾がいい匂いなのが意外だった事に加え、こんなに優しい手つきで触れてくるのも、低く耳の奥を撫でる様な少し余裕のない声で『めんこい女子じゃ』などと言ってくるのも意外過ぎて、やむを得ない体の反応以前に思考すらももはや正常の形を保てない程、はつみはされるがままであった。
 かくいう乾の方も、まったく抵抗を見せず頬を赤く高揚させ瞳を潤ませながら舌を差し出してくる彼女を見ていると果たしてこれは両想いなのではないかと勘違いすらしてしまいそうな感覚に陥りつつあった。…控え目にっても、彼女には淫の気がある様に思えたし、その情欲に中てられて乾の下半身はかつてない程の興奮を以て今か今かと刺激を求め反り立っていた。…だが、まだはつみの体に触れ始めてほんのひと時しか経っていない。まだまだ彼女の身体のあらゆるところまで愛でて、奥の奥まで味わい尽くす必要がある。体の中心で暴走寸前の熱棒を、その時が来るまで放置しておくのもまた一興だ。

 唇を離し、火照って汗に滲む額に張り付く前髪をかき上げてやった。形の良い眉が八の字に潜まっているのを見ると一段と欲情を掻き立てられる。改めて両手で胸を揉みしだきながら口づけをした後、おもむろに上半身を起こした乾は袖を抜いて上半身を露わにし、更にはつみの細い腰に巻き付いた帯にまで手を伸ばした。口元や上半身への愛撫だけで既に蕩けきっていたはつみはされるがまま腰帯を解かれ、引き締まって筋骨隆々な身体が自分の両足を割りながら再び自分の上に覆いかぶさるのを、極めて甘んじて受け入れる。潤み切ったその瞳と視線が重なると、まるで誘われ、煽られてているかの如く雄の欲が刺激された。
「…今日は、おまんの全てを攫っちゃるき…」
 脳の奥まで射貫くような熱視線を送りながら、はつみの緩んだ腰帯を抜き取り…ばらけた袴を掴んでずるずると引き払っていく。はつみはこれまでにない程早鐘を打ち鳴らす鼓動を感じながら両手で顔を覆い、下半身を取り巻く布が取り払われ、己の秘匿するべき場所が外気に晒され、乾に見つめられるのをひしひしと感じていた。






「おんしは…俺が嫌いか?」
「……嫌いじゃ…ないよ……」

…いっそ孕んでしまえばいいとも思いつつ、決して己の手の内に留まらぬ目の前の娘を抱き続けた。





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