※お試し小説※



「……。」
手元の子猫にチラリと視線を落とす以蔵に、は有無を言わさず応えた。
「…責任持って、この子達を育てるよ。以蔵クンも付き合って。」
「…おんしは俺に何がしたいんじゃ。」
「わからない。ただ、何でもいいから、以蔵クンの中に新しい何かを見つけてもらいたいの。」
「………。」

真摯なの視線は、やはり心を突き動かされる様な不思議な力がある…。
以蔵は小さく静かにため息をついたが、やがて無表情のまま頷いて見せた。

は微笑み、子猫の一匹を以蔵に託す…。


いちばん簡単な事から始めていこう。
彼の『やさしさ』と『笑顔』を探すのだ。
そうすれば、彼が剣以外に興味を持つ事も自然とつかめてくるだろうし…
やさしさを育めば、命の尊さを育む事にも繋がる。


二人とも何かを意識し始めていたが、何を意識しているのかは自分でも理由がつかない。
帰り道はなんとなく、ぎこちない雰囲気が漂っていたが…不快という訳ではなかった。


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