志士としての覚悟が足りないとか思われてしまったのかも知れない―と
の胸にも不安がよぎる。
(な、何か言わなきゃ…)
と思った矢先、武市の方が食べかけの餅を皿に戻し、
相変わらず視線を手前の餅に落としたまま少し抑えた声で言葉を発してきた。
「…俺はあまり多くの暇も無いが、おんしが望むのならばできるだけ
おんしの共をして回っちゃるきに。…一人歩きは控えいよ。」
そう言って、少しぎこちない手付きで再び餅を食べ始める。
はとっさに真剣そのものの表情で『はい』と頷いて見せていたが、
武市が見せるそんな不自然な様子にフと「あれ?」と思い、次の瞬間には
一方的な解釈をして気持ちが舞い上がってきた。
話の流れからして絶対武市が浮いた様なニュアンスで言っている訳では
無いと確信できる筈なのに、こういう時乙女の妄想や思い込みはやっかいだ。
(い、いやいや、武市さんは純粋に心配してくれてるんでしょ!?!??!
いやいやいやいやいやいやいやうんそうだよ考えすぎだってバカだな私…!)
「あ、あはははは!そ、そうですよね!はい!うん!おいしいっ!ゴク…ブハッ!!!」
「!?!?」
無理やり話を逸らそうとしてみたらし団子を食べ、茶を飲む。
茶が喉に絡まって思わず吹き出したりするに武市は驚き、ガタガタと
立ち上がったり手拭で拭ったりと、とたんにコメディな場面になってしまった。
「すっ、すみませ…っ!ゴホゴホ!!!」
「くっ…ふはは。余計な心配をする前に、俺はおんしのはちきんぶりに
もうちくと慣れねばやっていけんかもしれんのう。」
珍しく苦笑ではなく笑った武市に袖などを拭ってもらいながら、は
思わずずんぐりと顔を赤らめて閉口してしまうのだった・・・。
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