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解き放たれる運命:乾





※仮SSとなります。 プロット書き出しの延長であり、気持ちが入りすぎて長くなりすぎてしまった覚書きの様なもの。
途中または最後の書き込みにムラがあって不自然だったり、後に修正される可能性もあります。ご了承ください。



 永福寺事件において吉田東洋に許可なく無礼な建言をしたとして不敬罪を得ていた乾。およそ10日間の蟄居・謹慎が明けた頃、乾との面会を望んだ。

 元々上士としては珍しく『物事を公正に見極め決する』ところのある乾としては、どう考えても山田広衛は罪を得て免れない事件であったと振り返る。それでも乾が尽力してくれなければ寅之進はどうなっていたか分からないと告げるはつみに、蟄居の間もずっと気になっていた事を訪ねた。
「あらゆる記憶が抜け落ちて元の身分も分からぬおんしが、何故山内家の後継ぎ問題について深く知り、かつ『武家諸法度』なるものまで把握できておったのだ」
 と。その知識があったからこそ今にも決起して『謀反』を起こそうとしていた郷士達の出鼻を牽制できた事は間違いない。はつみは女だてらにというのみならず極めてようやったと付け加えるも、やはり『そもそも』の所で疑問が晴れないのだとの事だった。

 そして乾からはもう一報が伝えられる。山田広衛は蟄居・謹慎に処されたが、今朝がた、郷士ごときに負けたのだと気負いが過ぎて自刃したとの事。言葉を無くすはつみ。歴史上、今回の事件で寅之進と山田は両者ともに命を落としている。しかし今寅之進が生きている一方で山田も生きているという結果となり『一体これからどうなっていくのか』と思っていた矢先の、あまりにも急すぎる山田の死。これについて咄嗟に『運命から逃れた者を歴史が修正しにきたのでは…』と思い、言葉を失くしてしまったのだった。

…こうなってしまうと、寅之進はどうなるのか…。

 はつみの表情の変化を見て『やはり何か知っているのか』とも思う乾であったが、その疑惑であっても『何かを思い出したのか』という根拠があっての疑問であり、はつみが『あらゆる時事を歴史として把握している』とは思いもしない所である。
 思い詰めた様子のはつみに対し、乾は
「何か思い出しゆう事で辛い想いを抱えておるのなら、何時でも話せ。…何かしらの記憶が戻ったんじゃとして、今回の働きでおんしが土佐に何らかの危害損害を被る者ではないという事だけはよう分かった事じゃき。…・…おんしを信頼しておる」
 と述べた。乾の事であっても、歴史通りであれば彼が不敬罪を被る事はなかった。彼ははつみを信頼し、その傍にずっといた龍馬を信頼し、だからこそ今回の様な『無礼』を働いて罪を得てしまった。当然、『歴史』にはなかった事である。
 はつみは改めて乾の行動に礼を述べ、そして…乾の気持ちにも礼を述べた。乾は「ならば今からでも俺の嫁になるか?同情ならいらぬぞ」と言い、焦るはつみの顔を見て珍しく「…冗談じゃ」「気にするな」とほくそ笑んだ。





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