―表紙― 登場人物 物語 絵画

月が綺麗だ





※仮SSとなります。 プロット書き出しの延長であり、気持ちが入りすぎて長くなりすぎてしまった覚書きの様なもの。
途中または最後の書き込みにムラがあって不自然だったり、後に修正される可能性もあります。ご了承ください。



 家老見習いに抜擢された事を、妻の千賀が褒めたたえる。小松は気負った様子はないが、時世的にも極めて流動的で大変な時期であり、過激な『尊王攘夷』を叫んで脱藩していく者達のあとが絶えない事を告げる。自分もいつ命を狙われるかも分からないから、小松家の者としてしかと覚悟しておくのだよ、と優しく言い聞かせた。

 千賀は『清廉様の妻として覚悟はできている』としながらも、『清廉の妻として覚悟を持っているからこそ如何ともし難い』事が一つあると視線を伏せる。―小松家の跡取り、つまり小松の子供の事だ。小松は目まぐるしく抜擢と昇進を繰り返してはいたが比較的この領内で寝食を共にしている。にも関わらず、嫡男はもちろん、娘一人も身籠らない事に、吉利領主小松家の嫁として想像もつかない程の重圧を感じている様であった。
「…もし、お心当たりん方さいらっしゃんであれば、何でん、ご使命ば全うされんこつば最優先にお考えたもんせ」
 健気な妻を抱き寄せる小松。「そんな事は気にするな」と言いたいが、だからといって対策を考えない訳には行かない事でもあった。小松家に嫡男を誕生させることは、小松にとって使命といっても過言ではない。
 夜、月を見上げ『他にお心当たりの方がいらっしゃるのなら』と言われた言葉を思い返す。…迷う事なく思い浮かんだのは、他でもないはつみであった。
 身分は『土佐藩預かり』であり、その保護役は『土佐下士』。薩摩吉利領主・家老見習いにまでなった小松と比べると極めて低い。…だがその身分こそどうだっていい事だった。彼女の才と健全な精神を引き継ぐ子が生まれればさぞ育て外もあるというものだろう。身体は随分と華奢ではある様だったが…そう見えて胸や知りの膨らみは非常に魅力的で、非常に血色よく色艶の鮮やかな肌に唇が……

「…あっ」

 鼻の奥から垂れてきたものを察知して反射的に真上を向く小松。妾候補に長崎で出会った桜川はつみを思い出し、いささか下世話な想像をして鼻血まで出てしまうとは…と一人苦笑する。

 だが、あながち冗談でもないという事は小松本人が一番分かっている事であった。彼女は今、どこで何をしているのだろう…。あれだけの才女であれば、自分が声をかける前にきっと他の男が手を付けてしまうだろうが…その前に、なんとかして彼女を見つけ出したい気もしてしまい…。『薩摩のご家老』らしくなってきたか…と、また一人苦笑を浮かべるのであった。
(※薩摩弁まじでわからん)





※ブラウザでお戻りください