所属・拠点:土佐藩
天保9年1月20日生(約3才年上)
身長:165cm、筋肉質、やせ型、無骨
性格:陰鬱、顔隠し、感情抑圧、自己肯定感
一人称:俺
二人称:おんし、おまん
出会い:安政6年・土佐日常編
物語:「汝光輝ヲ生ズ」
Image Colors: 黒紅
土佐郷士の中でも微禄の家に生まれ、貧困の中で育つ。
大多数の上士は郷士に対し理不尽に振舞う事が当然の風潮にあったが、以蔵は特に目を付けられやすい子供であった。元々の性格として口数の少ないおとなしい性格で、付け込まれやすかった。且つ、身なりさえ整えれば高貴な出の人物かと見紛う程の整った顔立ちだった為、それを僻んだ一味が『下士は下士らしい顔でいろ』と以蔵の顔めがけて暴行を加えるという日々。軽格の岡田家は泣き寝入りしかできる事はなく、両親は以蔵を守ってやるつもりでその顔を前髪で隠そうとしたり、粗暴な上士がよくいる通りはなるべく避けて歩くなどといった対処に追われていた。自分の顔のせいで上士から目をつけられ、自分の分までびくびくと怯えながら日々を生きて行かねばならない家族を見ていた以蔵にとって、自分の顔はもはや『家族をも不幸にする忌々しいもの』でしかなかった。自己肯定感も皆無のままに、進んで自らの顔を前髪で隠す様になる。内向的な性格に加えてこの風貌では距離を置く者も当然増えたが、少しでも上士からの軋轢が減るのならと願う少年にとってはどうでもいい事だった。
だが、同じ様な理由で暴行に遭っていた池内蔵太は太陽の様な力強さで堂々としているのを傍目に見ると、それができない自分に対して更に嫌悪が重なっていくのも否めなかった。
やがて以蔵は、己の周囲にしか認知の及ばない、敢えて興味を持たない、関りを持とうとしない極めて閉鎖的な青年へと成長する。だがその分『感覚』は鋭く研ぎ澄まされていった。特に剣においては『眼前に迫る太刀筋を読む』という所で非凡の才を発揮し、通う道場では『無口で愛想も顔面もない敵なしの剣士』として畏れられる。名もなき若き剣豪がいると噂を聞いた武市半平太の目に留まり、以蔵の剣だけでなく、訳あって閉鎖的で粗野な性格となった彼の性根を理解した上で、剣を通し人の輪へと誘っていく。以蔵も馴れ合い自体は極めて苦手であったが、武市の顔を立てるつもりで周囲との関わりを無下にする事はなかった。
そしてある日、『かぐや姫』などと噂される妙な娘と出会う。
やけに華やかな娘で、眩しい。一言で言うなら『苦手』であった。だが女子に甘味茶屋で団子を食べようと誘われるのは初めての事であったし、触れられるのも初めてで…直感的に意識してしまう。自分の様な者と話そうと声をかけてくる娘というだけでも類を見ない珍しい奴だったが、乾という元男色の上士に言い寄られながらも逆に振り回している様子が見ていて小気味よく、そして恩師であり妻のいる武市に対し只ならぬ想いを抱いているであろう事、池内蔵太が何故か男だと勘違いをして空回っている事なども含め、色んな意味で彼女とその周囲の事が気になっていく。それと同時に、彼を取り巻く時勢の波も、彼の意思や理解に関係なく、彼を飲み込もうとしていた。
以蔵にとって師・武市半平太の側にいるという事。更に彼女に興味を持つ事、彼女の為に何かをしたいと願う事は、これまでの様に周囲に興味も理解も示さず、閉鎖的な場所で孤立を好んで生きるだけではままならないものであった。
…彼の運命は闇だった。
顔を重い髪が覆い隠す様に、彼の人生もまた厚い闇に覆われていた。だが彼に自己肯定感が生まれ、自信が育ち、剣と彼女を通じて道徳を構築し、その上で彼が自らの行いを選ぶと決めた時……それは何よりも強く輝き、彼自身を照らす光となる。