最中、長州志士と思われる輩に「裏切り者!」と名指しで叫ばれ、襲われる。
寅之進は乗馬中のはつみと陸奥を逃がし刺客二人を請け負う。はつみも陸奥も馬が得意ではなく暴走する馬を止められない。はつみは馬から飛び降り寅之進の元へ駆け付ける。ルシが加勢し、はつみは近くの石などを投げつける。寅之進は刺客二人がはつみの方へ行かない様必死にを相手していたが、徐々に負傷も増え押され気味であった。
陸奥が走り去った方角から人が現れ始め、刺客達は去っていった。膝を付く寅之進をはつみが抱き抱える。人々が寅之進に肩を貸し、あっちで人が襲われてるから助けてくれと馬上から叫びながら走り去っていった男がいたと教えてくれた。寅之進の怪我は深くはないが、近くの宿へ一旦入り消毒・手当てをする事にした。
はつみが消毒用に高純度の酒と清潔な布を買い集めている所に、通りすがりの紀州藩士に馬を駆ってもらいながらその横をヒィヒィと自力並走する陸奥と合流。暴走する馬の手綱を取り見事馴らしてくれたらしい。宿で寅之進の傷を消毒。医者に縫ってもらう間、熱湯で布を煮沸消毒して天日に干した。
これが乾いた後熱した裁ちばさみで割き、包帯を作ると言うはつみの行動の意味を殆どの人が理解出来ていなかったが、説明を求めた陸奥は『新たな知識』にすぐさま理解を示し対応してくれた。
夜、寅之進の傷を消毒し包帯を巻いてやる間、寅之進は己の剣技がはつみを守るに至らない事を謝罪し泣いた。寅之進は身を挺して逃がしてくれたのに勝手に出戻り足手まといになったのは自分の方だと謝罪するが、それだけではない、積もり積もっていた自己嫌悪の言葉を、弱音を、初めてはつみの前に曝け出した。
はつみは寅之進の忠義を受け止め感謝を示す。話の流れで、かつて寅之進がなぜ天然理心流を学ぶ事に決めたのかと訪ねたがはぐらかされた事があった話題になる。聞かせてもらえるかと尋ねると寅之進は迷った後頷き「本当は俺も…いつかあなたに聞いてほしいと思っていたから…」と言って、思わぬその理由を聞かせてくれたのだった。
※仮SS